タチコマンサー

『課長、少佐のウチコマが発見されました。今、バトーが新人二人を連れて向かってます』
『よし……。トグサ、そっちはどうだ』
『現場に着きました』

灰色の空。占拠された小学校。パトカーで染められた道。アズマとトグサが車から降
りた。
「公安九課だ。状況を」
「武装していると思われる集団が、西側校舎の最上階の教室を占拠。声明は今のところ無し」
「人質の人数は?」
「三十二人の生徒と教師一名」
「犯人の数と、内部の状況は」
「教室の防犯カメラは破壊されている。屋上の狙撃班と廊下の隊員が確認できたのは二人。武器は不明。ドアに仕掛けは無し。で、このヤマも持ってくのか?」
「たぶんな」


あらゆるネットが眼根を巡らせ
光や電子となった意思を
ある一方向に向かわせたとしても
孤人≠ェ
複合体としての個≠ノなる程には
情報化されていない時代…


『イシカワ、今から送る画像の人物の特定と、犯罪歴を洗ってくれ』
『わかった、任せろ』
 モニタに送られてきた画像が映る。顔の特徴から人物を特定し、名前を前歴者のデータベースで探す。薄暗く、緑の光に彩られた九課のダイブルーム。

「身代金については何にも言ってきてないんだよな」
「所轄の刑事によればな」
「で、トグサ、どうする」
「パズとボーマは西側階段から光学迷彩を使って教室の後方へ、ウチコマは屋上からワイヤーで降下。俺とアズマは南階段からだ」
「了解」
『トグサ、男の身元がわかったぞ。二人とも性犯罪の前科がある。総務省のロリコン・ブラックリストにも名前があった』
「やれやれ」


 何年も前からそのままになっているかのような古い倉庫、人気は全くない。割れてガムテープでふさがれている窓ガラス。壊された鍵。バトーは愛車から降り立った。
 錆付いた扉を開けて、中に入る。放置された機械達。外から差し込む一筋の光に、緑色の戦車が照らされていた。

 
「トグサ、南校舎の屋上から狙いはつけているが、狙撃は難しい」
「わかった」
 誰もいない小学校の廊下。汚れた壁。窓の外は曇り空。階段を最上階の四階まで上がると、占拠された、異様な教室のすぐ外だ。


 ウチコマに、ハッチを開けさせる。バトーはコードを、ハッチ内のジャックに結線させた。改ざんされたデータ群。複数の匿名中継器を経由させて衛星にアクセスさせた痕跡。新しく上書きされたファイル。

  バトー、忘れないで
  貴方がネットにアクセスする時
  私は必ず貴方の傍に居る


「トグサ、配置についた。SWATは下の階で待機中」
「了解。援護を」
 廊下には誰も見えない。ドアを開ける。
「警察だ、人質を解放しろ」
 銃を突きつけるトグサ。後に続くアズマ。
「武器を捨てて、人質を解放しろ」
 犯人は四人。銃を持っているのは二人。少女を盾にしている。
 犯人の一人が、笑いながら、ショットマシンガンを乱射した。壁に穴があく。
『パズ、ボーマ、』
『人質が邪魔だ』
『ウチコマ!』
 窓の外に下りてきたウチコマ三機をその犯人は撃ったが、トグサのマテバに撃たれた。
「無駄な抵抗はよせ」
「近づいて来るな! 」
 ピストルを突きつけられて怯える少女。後ろにいた犯人の一人が、ナイフを振りかざした。
 ナイフの男が狙撃され、人質に血が飛ぶ。
『ウチコマ、退いてろ。トグサ、こっちでやる』
『リョーカイ』
 ウチコマたちがケーブルを切って、地上に降りた。パズが少女にピストルを突きつけていていた男を撃ち、サイトーが残りの一人を仕留めた。

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